空手って

14年くらい前、空手を習っていたことがある。
師範は厳しい人だった。道場に限らず、人間としてやってはいけないことなどを教えられた。


昨日の夜。
夕飯を買いに出かけたら、狭い道を塞ぐようにワンボックスが止まっている。対向車が通れなくて困っているのに知らん顔で荷物の搬出を続けている。
そして、金髪のニイチャンが4、5人、談笑している。
さらに、僕が横を通り過ぎようとしたら、その金髪のニイチャンの一人が、急にこっちを向いて、道路にツバを吐き捨てた。危うくジーンズにかかるところだった。


そのワンボックスのテールゲートには、近所の空手道場のステッカーが貼ってあった。


最近の空手道場では、マトモなマナーも教えないのだろうか?
マナーも知らん奴が、空手をマトモにマスターできるのだろうか?


僕が空手を習っていたころ、師範がいつも口を酸っぱくして言っていたこと。
「単なるケンカ程度のことで、この空手の技を使ってはいけない。君達は空手を習っている。
しかし、私は、人を殴り倒すことを教えているのではなく、君達が人間として強くなることを望んでいる。
素人相手のケンカで空手の技を繰り出してはいけないし、ましてや空手の技を武器に人を脅すようなことを絶対にしてはならない。」


僕はそれを守ってきた。数年に一度程度のケンカでも、空手の技を使ったことがないどころか、反撃もしたことがない。反撃したら、空手の技が出てしまうだろうから。
空手の型をデモンストレーションとして見せびらかしたこともない。空手をやっていた、というと「見せて」と言われることもあるけれど、見せたことはない。「忘れちゃったよ、もう昔の話だし」と言ってごまかして断っている。
それが、師範の教えに従うこと、空手道の教えに従うことではないか?と思っているから。


道場の車で他の車を通せんぼして、通行人の有無も確かめずにツバを履き捨てるような人たちは、覚えた空手の技をどのように使っているのだろうか。
少なくとも、人を救うため「だけ」に使っている、なんていうことは無いんだろうな、と思う。