血は争えない

僕の父親は、自分の悩みを、家族には絶対に話さない。
「それを話すことで、家族に心配を掛けるのが嫌だ」と、父は言う。


僕はそんな父に何度も、
「話して楽になることもある。家族なんだから、心配かけるとか、余計は気を遣わないでくれ」と言った。
しかし、父は頑として、自分の悩みは話さない。


そんな父の性格が、いつの間にか自分にも伝染しているようだ。
「話せば楽になる。親しい仲なのだから、余計な気を遣わないで話してくれよ」と投げかけている僕自身が。


大事な人に、自分の悩み、辛さ、憤り、そういう心の中のぐちゃぐちゃしたものを聞かせたくない。
ずっと一人で耐えて、耐えて、耐えて、ぐちゃぐちゃしたものが醗酵して笑い話になるまで、口を割りたくない。
大事な人の笑顔を、僕の悩み、辛さ、憤り、寂しさ、そういう心の中のぐちゃぐちゃしたもので曇らせたくはない。
そういう父親の気持ちが、よくわかるようになった。


オヤジ、ごめんね。