創作の自由と模倣
まさか、こんな事態になるとは思ってもいなかったのだろう。
最近大ヒットしている「恋のマイアヒ」。音楽と、空耳で付けられた日本語の歌詞に合わせて変なネコの絵が踊る、あのPVで有名になった。
あのネコの絵が、2ちゃんねるのAA(アスキーアート)である「モナー」にそっくりだということから、問題は始まった。
その後、作者が「アレはわたしのオリジナルです」と言い張り、エイベックスと組んでキャラクタービジネスを始めたことで、2ちゃんねるでは祭が起きている。
はっきり言って、AAと「のまネコ」、ぱっと見では全く区別はつかない。モナーとのまネコはちょっと違うような気もするが、AAのひとつである「しぃ」と「のまネコ」は僕には区別できない。
怖くなったので、エイベックスに電話をかけ、問い合わせることにした。
確かめたかったのは、以下の三点。
- 本当に、のまネコはオリジナルなのか?オリジナルでないという状況証拠はいくつかあるが、オリジナルという証拠はあるか?
- のまネコがオリジナルであるのかどうか、ということに関して、エイベックスとしての調査は行っていたのか?この件に限定せず、アーティストと契約するときに、エイベックスは、そのアーティストの作品が模倣であるかどうかの調査は一般的に行っているのか?
- のまネコグッズが発売されるに当たって商標登録がされると思うが、そうなるとモナーはのまネコの類似商標として、AAを書くだけで商標権侵害として訴えられる可能性があり、私はこれを非常に恐れている。その点についてどう考えるか?
1つ目、2つ目の質問に関しては「お答えできません」の一点張りだった。3つ目の質問に対しては「AAとのまネコは全くの別物です。だからモナーをのまネコの類似商標として訴えることはありません」とのことでした。「正直言って、私には区別がつきません。他の人にも区別がつかない人が多くいるからこれだけ問題になっているのです。だから、私の書いたモナーを、エイベックスの方が『これはのまネコだ』と言い、私が商標権侵害で訴えられる可能性がないとは言えないのでは?」と聞き返したのですが、「全くの別物ですから」と繰り返されるだけだった。
モナーとのまネコ、どこがどう違うという根拠は最後まで示されなかった。似てる、という意見は黙殺された。
この理論が通るなら、怖い時代になりそうだ。似てても「違う」と言い張れば通る。僕のこの文章を丸写しして、句読点の位置を変えて、「これはオリジナルです」と言い張れればオリジナルの完成だ。
大学時代、レポートを手書きで丸写しして先生に怒られている同級生を良く見かけた。彼らもこれからは、それで単位を落とすことはない。何せ、手書きだからフォントが違う。これもオリジナル。
エイベックスの松浦社長が今年4月に発表した、「新コンプライアンス・ポリシー」というモノがある。コンプライアンスとは法令遵守のことである。この「新コンプライアンス・ポリシー」は、法令だけでなく、クリエイターとして、アーティストとしての良心だと思った。
しかしエイベックスは今、法律に触れる触れない以前に、自社で発表した「新コンプライアンス・ポリシー」をすでに破ろうとしている。
僕も、ネット上でいくらかの文章を書いている。ホームページにはいくつかの詩を書いている。レベルとしてはそんなに高くはないし、自分がクリエイターだとかアーティストだと思った事はない。しかし、そんな自分が書いたちっぽけな詩にも、僕自身は愛情を持っている。だから、何をしても許されるような前例を作ろうとしているエイベックスの姿勢は絶対許せない。
僕も、ちっぽけな正義感とともに、戦う。