お笑い

仕事であれこれと文書を読むのだけど、その中に面白い文章を発見。タイトルは「日本の会社の常識」というもので、調べてみたら、「製造業崩壊 苦悩する工場とワーキングプア」(北見昌朗)という本の一節らしい。

  • 上司や先輩に対してきちんと敬語を使い、礼儀を尽くすこと。
  • 若いうちは、とにかく上司や先輩から可愛がられるようになること。
  • 新入社員のうちは、上司や先輩の机を拭くぐらいの謙虚さが必要。
  • 職場の人間関係を大事にするべし。飲み会には必ず参加のこと。
  • 若いうちは時間のことを気にせずに仕事に打ち込むべきこと。
  • 新入社員は一日も早く仕事を覚えて給料泥棒から抜け出さなければならない。
  • 「石の上にも三年」といわれるように、どんな仕事も一人前になるために苦労があるもの。
  • 仕事は先輩から盗むものだ。
  • 「一芸八年、商売十年」といわれるように、一つの仕事に打ち込んでいると、後半にぐっと伸びるようになる。
  • 同僚より1時間早く出社しよう。出だしが早ければ、必ずいい仕事ができるようになる。
  • 整理・整頓・清潔・清掃・躾に努めよう。品質は5Sから始まる。
  • 朝のラジオ体操は、身体を柔軟にするので労災事故の防止のために必要。
  • 始業前の10分間清掃は、自分の職場を綺麗にするのだから常識。

列挙し出せばキリがなくなるが、これらのことは日本の会社の常識だったはずだ。
ところが最近のワカイモンは、このような常識がまったく身に付いていないのは困ったものである。
最近は家庭でも学校でもなんにも躾をしていてくれないから、会社は躾をしっかり叩き込もう。

一応、製造業の端くれに勤めているのだけど、これはどうだろう。当たり前のことも当然書いてあるけど、なんだか一歩間違えば「団塊世代のお笑い文章」になってしまうぞ。

突っ込み。
・上司や先輩に対してきちんと敬語を使い、礼儀を尽くすこと。
これはもう当たり前。でも、就職活動中はそれなりに敬語を使ってしゃべっている連中が入社したとたんに敬語を話せなくなる。その理由は何か?
答えは、その上司や先輩がキチンとした敬語を使えていないこと。新人が悪い、という前に、上司が新人などに対して敬語も使えずに話しているのも一因。
上司が新人に敬語など使えるか、という人もいるかもしれんが、ビジネスの場なのだから上下関係は当然あるという認識の上で、上司も新人に敬語を使うべきだろう。


・若いうちは、とにかく上司や先輩から可愛がられるようになること。
これもまぁ当然だけど、上司や先輩の可愛がりってのは時折独りよがりになって、「オレの酒が飲めねぇのか」になるからたちが悪い。


・新入社員のうちは、上司や先輩の机を拭くぐらいの謙虚さが必要。
はぁ?謙虚さと机を拭く行動の意味が結びつかない。むしろそんなことしてるやつは「上司や先輩に媚売ってる」ようにしか見えない。
そんなんしてるヒマがあったら、仕事のマニュアルを穴があくまで読み返したほうがいいやね。


・職場の人間関係を大事にするべし。飲み会には必ず参加のこと。
飲み会行かなければ人間関係を大事にしたことにならないの?結局、酒の力、飲みニケーションでなければ人間関係を形成できない上司・職場に問題がある。


・若いうちは時間のことを気にせずに仕事に打ち込むべきこと。
時間のことを気にせずにってのは、サービス残業押し付けの免罪符のつもりでしょうかね。「勉強してんだから仕事じゃねぇ、残業代請求すんなよ」とか「半人前のクセに残業代請求すんな」という上司もいるけれど。勉強だって仕事のために勉強してんだ。仕事がなきゃ勉強しないようなことを勉強してんだ。全ては仕事の一環。ごちゃごちゃ言わずに残業代出せ。
こういう上司に限って、「飲み会も仕事のうちだ」とかいって、飲み会のときに「今日はオレがおごる」とかいったあとでコッソリと領収書を会社の名前でもらってたりすんだろ。


・新入社員は一日も早く仕事を覚えて給料泥棒から抜け出さなければならない。
絶句。社員を、言うに事欠いて「泥棒」とは。んだったらクビにすりゃいいじゃん。後輩を泥棒扱いするような人だから、その後の文章の展開も大体読めるよな。


・「石の上にも三年」といわれるように、どんな仕事も一人前になるために苦労があるもの。
一人前になるために苦労があるのに、その苦労を味わう、一人前になるまでの期間は「給料泥棒」ですか。


・仕事は先輩から盗むものだ。
そんなことばかり言ってるから2007年問題が起こったんでしょうが。職人芸的な仕事も、出来る限りそれらをシステマチックにして、後輩に技術を受け継いでいくことが重要。


・「一芸八年、商売十年」といわれるように、一つの仕事に打ち込んでいると、後半にぐっと伸びるようになる。
これもどうかね。
社内でも「後工程はお客様」って考えのもと、ある程度基礎が出来たら、設計から購買、検査まで全工程の仕事を体験しておくと、設計段階から後工程のことを考えて仕事できるようになる。このほうがずっと効率的だよ。


・同僚より1時間早く出社しよう。出だしが早ければ、必ずいい仕事ができるようになる。
多分この人の書いた意図は「一時間早く出社して仕事を始めろ」と言いたいんだろうし、実際これを実践してる人も多いんだけどさ、朝であっても「時間外労働」であることに変わりは無いわけで。当然仕事しろってんなら金払ってんだろうな?残業じゃないから金払わない、という理屈でこういってるなら、クソ。
早起きがいい、っていう意味で言うだけなら、早起きして散歩したりシャワー浴びたりして、同僚と同じ時間に出社しても、同僚よりいい仕事が出来るよね。


・整理・整頓・清潔・清掃・躾に努めよう。品質は5Sから始まる。
これはまぁ正解。


・朝のラジオ体操は、身体を柔軟にするので労災事故の防止のために必要。
体の柔らかさと労災事故の因果関係が不明。つか、労災事故の大半は体の柔らかさと無関係だと思うが。


・始業前の10分間清掃は、自分の職場を綺麗にするのだから常識。
これも、清掃を派遣に委託してる会社が多い現在、どこまでそういえるかね。派遣業者が清掃してくれるんなら、その時間は資料読むとか、仕事の準備したほうが効率的。


こういうことを半ば本気にして若い人たちに考え方を押し付けてきた結果が、日本の製造業の退廃じゃないのかな。時代はどんどん変わってる。それに合わせて、製造業が作る製品も変わってるし、ビジネスモデルも変わってるし、経営手法も変わってる。
製造業の中の人だけ(多分こんなん言ってるのは団塊〜定年の中間管理職だろうが)がこんな前時代的なこといってたら、時代に取り残されますぜ?