夏祭り

就職活動でJR東日本を受けたとき。
会社説明会で、JR東日本は「現在、一日に1600万人を運んでいますので、一人から10円多く取れば、一日で1億6千万円の増収になります」といっていた。
僕はこの考え方に腹を立て、「一人から10円多く取ることを考えるなら、一人あたりのコストを10円下げることを考えよ、それが輸送サービスではないか」と小論文に書いた。
これがどう転んだのか、リクルーター面接をくぐりぬけ、本社面接まで進んだ。
以前より明らかにエラそうな人たちの前で、持論を繰り返した。「整備新幹線開通とともに在来線の基幹本線を3セク化するのは、地元住民の利便性を損ねている。もっとやり方があるはずだ。新幹線開通で在来線の客数が減るのは、今の在来線に魅力を作り出せないJRのやり方に問題があるからだ。」
この面接で、僕は不採用となった。


あれから1年。毎日通勤で山手線に乗る。もう、JR東日本にサービスなんて求めない。


山手線の車庫、東京総合車両センターで一般公開があるというので、出かけてみた。
広い構内。マニアにはたまらない光景が続く。
知りたいことがあったので、近くの係員に尋ねてみた。彼の名札には「主任運転士」の文字が光っていた。


質問ついでに雑談すること40分。彼と、今の鉄道、将来の鉄道論を語り合っていた。
なんとなく、持論を展開してみた。
彼は、納得してくれた。「上には上の考えがあるけどねぇ・・・」とため息をつきながら。


まだこんないい人がいるんだ。
安心して、いい気分で、家路についた。
きっと、この人の運転はやさしくて安心できるんだろうな。