第4章:自転車にめぐりあう

ジモティ」というサイトがある。
一種のフリマアプリであるが、ご近所さん同士で直接会って、商品を手渡しすることがメインコンセプトである。


僕は1年ほど前からこのサイトを使い、色々なものを売ってきた。
2GBなどのMicroSDカードを200円で、使わなくなったドライヤーを500円で、など・・・。最近は、ローディのツーキニストにPORTERの自転車用リュックを6000円でお売りした。


クロスバイクは新車を買う気満々でいたのだが、ふと一度「クロスバイク」と検索を掛けたことがある。この手のサイトは、一度検索をすると検索履歴に沿ってプッシュ通知が飛んでくる。「東京都でクロスバイクが出品されました!」と。

新車を買うつもりだったし、出品を見てみると、割とジャンクや部品取りのような車歴の良く分からない車両だったり、目いっぱいカスタムされていたりで、自分が欲しいと思える自転車が出品されるようには思えなかったので毎日スルーしていた。
しかし、こうも新車を買うタイミングを逃すと心が折れ掛ける。そんな日の通知から、「たまには見てみようか」くらいの気持ちでふらっと新規出品一覧を見ると。


2万円で赤いクロスバイクが。購入後1年乗車、2年屋内保管。カスタムの内容が細かく記され、コンディションは新品同様。クロスバイクのハンドルは、BMXのハンドルを流用したり海外規格そのままという理由で普通の自転車より長いのだが、それを乗りやすい長さにカットしているというカスタムが目に付いた(このハンドルカットというカスタムも調べている中で知識として持っていた)。
安い。コンディションが良い。超有名メーカーでなく、比較的廉価な車体で、自転車泥棒の対象にはならなさそう。でもコンディション良すぎて、僕みたいな初心者が乗っていいのか。屋外保管になっちゃうけど、いいのか。
一晩悩んだ。嫁にも聞いた。僕が唸っているのを知っていた嫁は「あらカッコいいじゃん。買えば」と笑ってくれた。


次の日、商談希望のメールを出した。タイヤサイズや、泥除けを付けるダボ穴の有無を聞いたら、写真を大量に追加して回答してくれた。この出品者はとてもいい人だ。
心が決まった。ふとジモティを覗いてから2日。購入希望の返信を書いていた。


その週の土曜日の朝11時、引き渡しが決まった。


(続く)