第1章:自転車通勤を始める

今年は、年頭から体調不良が続いた。


1月末のおたふくかぜ様の症状は、おたふくかぜではなかったが、ウイルスが違うだけで症状はおたふくそのものだった。
4月末にもひどい風邪をひいた。
1月の時に血液検査を受けたら、おたふくかぜの抗体も無くなっていることが判明したが、それ以上に肝機能の悪化が問題になった。産業医は「血圧下げようと飲んだ漢方のせいだろう」と言ってくれたが、5月の健診であまり改善していないことから、おそらく食生活の問題と判断された。


まじめに運動しなければ。でも、平日はあまり時間が取れない。
1月の健診結果を見たころから、自転車通勤という言葉は頭にはあった。家から会社まで15km、1時間。ちょうどいい距離、いい時間。だが、会社の移転をきっかけに、駐輪場が狭いという理由で自転車通勤は禁止になっていたので、諦めていた。


諦めていた自転車通勤だが、ある日、閃く。「会社まで乗って行こうとするから難しい。途中まで乗っていけばいい。」
通勤経路は、自宅最寄り駅から地下鉄で池袋へ。池袋から埼京線で大宮方面へ。だから、家から赤羽あたりまで自転車で行けば、ショートカットにもなる。これだ。
さっそくリサーチを進めると、浮間舟渡駅が一番条件にあうことが分かった。家からもむしろ近いが池袋からは埼京線で都内最遠なので、時間的にも余裕ができる。
そしてある土曜日の夕方、浮間舟渡駅まで走ってみた。片道7km、久しぶりの長距離(?)ライド。30分もかからない。行きは下り坂ばかりで、非常に楽だ。
帰りは…急な上り坂。登り切れず、押して歩く。それでもいい。ちょっと楽しい。その日のうちに自転車屋に持ち込み、チェーンを軽く見てもらうが異常なし。


翌週から、行きは7km、帰りは9kmの自転車通勤が始まった。帰りの道のりが長いのは、急坂を避けて遠回りしようというルート検索の賜物である。それでも内装三段の一番軽いギヤでぎりぎり登れるくらいだったが。
その1週間の間で、行きのタイムは3分縮まり、また近道を見つけてさらにタイムを縮めた。帰りは登りきれない急坂の横にエレベータ付き歩道橋を見つけて、エレベータで上下移動という裏ワザを見つけ、遠回りをする必要が無くなった。


身体にもさっそく変化が現れた。1階から4階まで階段を登ったときの息切れが減った。すぐに腹が減るようになった。汗を大量にかくようになった。会社に着いた時、また家に着いたときには、雨に打たれたかのようにシャツが濡れる。困るので、速乾のパーカーやパンツを買いあさった。最初はユニクロで、その後はワークマンで。ワークマンの作業着は、自転車乗りに最も適した服だと思う。


さらに翌週、自転車を点検にだし、4000円掛けてブレーキシューとワイヤーの交換、微調整をしてもらった。
停車中にちらっと見たいスマホをハンドルに取り付けるホルダを探したが、良いものが見つからず、作業着屋で腰道具入れを買い、ハンドルにスナップオンしてポケットを付けた。
チェーンは朝から1時間掛けて汚れとサビを取り、黒かったチェーンが銀色に戻った。


こんな感じで、自転車に手を入れることの楽しみを思い出してきた。


(続く)